ガラスの向こう

2017/10/09

とある喫茶店の喫煙席と禁煙席とを仕切るガラスの壁にもたれ、
紫煙をくゆらせながら週刊誌を広げていると、
ガラスの向こう側に座る2歳ぐらいの男児がこちらに手を振ってきた。
ヒゲ、メガネ、長髪は、どうやら子供が恐れを抱く三種の神器のようで、
初対面の子供に泣かれることはあっても、なつかれたことはほとんどないが、
かけていたのがメガネではなくサングラスであったがために、
彼の目にはライダーか地球防衛軍の隊長とでも映ったのか。
無邪気な笑顔に応えぬわけにもいかず、
敬礼して見せるとまるでヒーローを見上げるような表情をしていた。
彼は、まさか目の前の隊長がついさっきまで、
「巨根ねだるママたち」なんて記事を貪るように読んでいたなどとは、ゆめゆめ思っていなかっただろう。


荒木建策