荒木建策（放送作家/脚本家）

乞食なんて言葉は、
本当は使わない方が良いのだろうが、
あえて、こんなタイトルで書かせてもらうのである。

今回のコラムの内容は、
学校の部活での遠征費の募金活動に関してだ。
呆れというか哀れみというか怒りというか、
なんとも言えない、
しかし、確実な負の感情が私の中にある。

遠征費の募金は、
主に全国大会出場時などに行われていて、
今、滞在している長崎市の繁華街でも、
休みの日には、
必ずどこかしらの中学、高校の運動部が
募金箱を持って「応援」という名の
現金のカンパを声高に求めている。

「僕たち〇〇高校××部は、
△△月に行われる全国大会に出場します！
応援よろしくお願いします！」と募金箱を掲げる。
人目を憚らず朝から晩まで声を張り続ける。
こういう人間を私は「スポーツ乞食」と表現したい。
東京や大阪での全国大会となると、
選手本人や保護者の移動費や宿泊費で
負担額は増大になるのは分かる。
分かるのだが「想定してなきゃ」。
なんで見ず知らずのあんたらの旅費を
通りすがりの市民や観光客が出さなくてはいけないのか。
それは、道端のホームレスがやってることと
なにが違うのだろうか。

まだ、言いたいことはある。
大体の場合、集まった資金の使途が不明朗だし、
間接的に応援に出向く保護者の旅費に
消えていると思うと不快感しかない。
さらに言うと、
公立学校の場合、私的な活動に
公的な費用や労力を過度に費やすことへの
懸念も生まれてくる。

そして、募金を呼び掛ける側の問題も。
学生たちが募金への参加を
実質的に強制されているケースがある。
ある意味、乞食になることを
学校側が強要しているのと同じではないのか。

それから、通りすがりの人間への迷惑。
学生や保護者、監督や学校関係者が
全力でカンパを求めている中を
募金せずに通る時の気まずさ。
通行人をそういう気持ちにさせるのは、
嫌がらせ以外の何物でもなく、
もう募金ハラスメント、ボキハラである。

選手自身への悪影響もある。
穿った見方だが、私は
彼らが街中で声高に大会への出場を誇り、
募金を募ることを「善行」だと思っているように
見えるのである。
スポーツを通じた教育や人格形成といった
本来の目的が二の次になっているのではないか。

以上のことを踏まえてひと言、
若人よ、スポーツ乞食になる勿れ。
金を一円でも多く集めようとするよりも
バットを一回でも多く振って欲しいと思う。