ハイブリッド・スキヤキ

2026/01/12

荒木建策(放送作家/脚本家)

年末年始に家族が集まり、
ちょっと贅沢しようか、というタイミングで
スキヤキを食べることは
日本人にとっては「あるある」である。

ところが、うちの家族は
私は東京、叔母は福岡、その他は長崎と
家族が散り散りで暮らしているので、
各々にとっての「理想のスキヤキ」に
ズレが生じている。

それもそのはず、
関東のスキヤキは「鍋」の扱いであり、
「牛鍋」と呼ばれていた頃の名残で、
「割り下」という合わせ調味料で煮て作る。
一方、関西のスキヤキは「焼肉」の扱いなので、
煮るのではなく焼く料理というイメージ。

調味料も東と西では異なる。
関東は、先に調味料を合わせて
味を整えた中に具材を投入する。
醤油、みりん、料理酒、砂糖、だしで作った
「割り下」である。
作っておいた割り下を先に鍋に入れ、
ひと煮立ちしたところに肉と野菜を入れていき、
味が均一になるのが関東方式の特徴である。

一方、関西は、
先に肉を焼いて味付けをしてから野菜を入れる。
調味料は割り下ではなく、
砂糖、醤油を直に入れて味付けしていく。
調味料が煮詰まってくれば酒か水で薄める。
関西では割り下を作らないので、
その存在自体を知らない人もいるのだとか。

それから具材。
スキヤキに入れる肉以外の具材は、
豆腐、ネギ、春菊、しらたき、しいたけ、麩など、
関東と関西で大きな違いはないようだが、
各家庭のごちそうだけあって、
家ごとの「我が家流」があり、
にんじん、かまぼこなどを投入する家庭もある。
卵で絡めて食べるのが定番だとしても、
生卵だったり鍋の中で加熱した卵だったりするし、
締めもうどんやごはんと、
それぞれの家庭でアレンジがあるのも面白い。

それはさておき、
我が実家でも例に漏れず、
年末にスキヤキをしたのであるが、
関東風にするか関西風にするかでひと悶着あった。

具材に関しては、
上記のノーマルなものが並んだが、
味付けの仕方をどうするか。
関東風か関西風かで意見が分かれたのである。
あの店のスキヤキが美味かったとか、
色々な体験談やうんちくが飛び交った後、
何故か、最後は私に委ねられたので、
まず肉を軽く焼いて、
醤油、みりん、酒を1:1:1で味付けし、
一陣目を頂き、その後に「鍋」方式に変換する
ハイブリッド・スキヤキにすることにした。

関西風を推していた民にも
最大限に配慮した采配だと思ったし、
好評だったのだが、
よく考えたら関東勢は私だけだった、という、
ただの我儘だったのかも知れないお話。