歩行が困難になった話

2018/03/12

極端なSではないし、かといってM側に振りきれているわけでもない。
両者がバランスよくミックスされた、カフェラテのようなものである私にとって、痛みは悪である。
つねられるのは嫌だし、殴られるのも勘弁だし、タイキックは、もはや罰ゲームでしかないが、
この世でただ一つ、痛みが「悪」ではなく「善」となる場所がある。
価値観が見事に逆転するその場所とは、労働者の駆け込み寺「足つぼマッサージ」である。
足つぼだけは痛くてナンボ、むしろ痛みがないと損したような気になる。
しかし、本日、施術してくれたのは、日本語が不自由な外国の方で、
彼女は、あろうことかグイグイやられている最中に苦悶の表情をしていると、
その度に力を弱めてしまう、中華のイメージとはかけ離れたタイプだった。
中国語とは言わないまでも、英語ぐらいはもっと真面目に勉強しておけばよかった。
心よりそう思いながら、無い語彙を瞬時にかき集めて出た言葉は「フルパワー!フルパワープリーズ!!」
言い方が悪かったのか、その途端、土踏まずを渾身の力で押され、
今、室内を歩くにも支障がある。


荒木建策