ノンフィクション

2018/05/14

「荒木さん、次はどうしましょう」
両者視線を落としたまま何分か過ぎた頃、沈黙から逃げ出すようにディレクターが口を開く。
「特番ですから、いつもとテイストを変え、OOの挑戦状っていうのはどうでしょう」
「誰に挑戦するんですか?」「いや、具体的には…」
注文したブレンドはとうの昔に冷めているのに、2人を取り巻く空気はグツグツいっている。
「とりあえず今日はこの辺で」という言葉を抑えつつ、
身体の中から搾り出すようにしてアイデアを出し合った結果、
候補として挙がったのは、
やさぐれパンダが母親の死を機に人生を見つめ直すファンタジーと、
私の私生活を脚色せずにそのまま伝えるノンフィクション。
ここまで決まったところで、2人してグッタリしながら喫茶店を出たのだが、
改めて考えるとファンタジーは論外。
ノンフィクションについても面白いのかという疑問が湧いてきたため、
試しに今日一日の出来事をそのまま書いてみたのだがどうだろう。
いや、結構。答えなくて結構です。
おやすみなさい。


荒木建策