心配性

2018/06/18

心配性である。

シリアの情勢や角界の行く末など、
あまりに大きな問題はただぼんやりと眺めてしまうが、
簡単に手が届きそうなサイズの問題に対しては、心配の虫が顔を出す。

だからこそ、今、特急電車の本来ならゆったりできるシートで、
どうにも落ち着かぬ時間を過ごしているのである。

斜め前に、よれたスーツの男性が座っている。
隣の席は直立、男性が座るシートのみ倒しているため、座席と座席の間から行動が逐一目に飛び込んでくる中、
その男性は何かに取り憑かれたかのように鼻をほじり続けている。

もしや、鼻の穴に盗んだダイヤを埋め込もうとしているのか(①)
それとも埋め込んだそれを取り出そうとしているのか(②)
あるいは何かの霊が降りたのか(③)

可能性としては④、ただの不潔なおっさんの線が最も濃いわけだが、
いずれにしてもかれこれ30分ほどもほじっていれば、鼻血が出て、
彼の隣に座る姿勢の良い美人の白いブラウスを汚してしまうのではないかと、気が気でないのである。


荒木建策