敗けられない戦い

2018/06/25

近所の銭湯のサウナでは、日々戦いが繰り広げられていて、
私には勝率が2割にも届かない齢50ほどの天敵がいる。

前回の対戦も完敗。
ただし、あの時は私が先にリングインしていたため、負けても面子を失うことはなかったが、今回は違った。
先にリングインしていたのはおっさんだ。
敵に精神的ダメージを与えようと、下を向かず、表情を変えず、したたる汗を拭わずに、できる男を演出。
さらには「絶対に敗けられない戦いがここにはある」と、
ワールドカップ中継でもよく耳にするフレーズをつぶやきつつ熱さに耐えていたのだが、
おっさんの方が一枚上手だった。
演出なのか本気なのか、おっさん何といびきをかき始めたのである。
100度の中で寝る男。
いびきによって受けたダメージは大きく、今回も完敗。

暗い気持ちを引きずったまま飲み会に参加したところ、
これがまた何やら血筋のいいサラブレッドの集まりで、
気後れとサウナで受けた敗北感を払拭しようと思わず酒に走って泥酔してしまった。
二日酔いで頭は痛いし、まったくいつにも増して冴えない日曜日にこのコラムを書いている。


荒木建策