春には春の、秋には秋の、冬には冬の良さがあるが、やはり私は夏が好きだ。

だから、更なる熱を求めて、大通りの向こう側にあるサウナに向かった。

堅く閉ざした心をこじ開けるほどの室温。止めどなく流れ出る汗…。
熱をじっくり楽しんだ後、火照った身体を水風呂でクールダウン。
それでもまだ汗は流れてくるが、ベンチに腰掛け汗が引くのを待つこの時間もまた、夕涼みをしているようで堪らない。
そういえば、どこからともなくひんやりした風が流れてくる。
ちょっとした幸せを噛みしめつつ、風が来る方向に目をやれば、
禿げ上がったおっさんがドライヤーを当てていた。
禿げ上がっているわけだから、もちろん乾かしているのは髪ではない。
脇だの股間だのにドライヤーを当てているということはつまり、
私はおっさんの汗を多分に含んだ冷風を全身に受け、あろうことか幸せを噛みしめてしまったということ。

これだから夏は…。私は冬が好きだ。