あのレスラー絶対許さん

2019/03/11

昨年12月、私が主宰を務める劇団の公演後に若い女性2人組に呼び止められた。
「すみませーん、写真撮ってくれませんか?」。
幼少の頃、興行で来ていた有名プロレスラーにサインをもらおうと駆け寄ったところ、
シッシッといった感じで追い払われた。
テレビで見るのとはまるで違う対応にショックを受け、
その年の七夕、短冊に「将来レスラーになって○木を血祭りにあげる」としたためると同時に、
もしも自分がその立場になったら、ファンの求めには快く応じようと誓ったのであった。
レスラーにはなれなかったが、今もその誓いを忘れることはない。
こんなクソ作家でよろしければハイ喜んでと、ポーズを取る。
だから、声を掛けてきた方の女子の肩を抱いて、目線を送った。
ところが、カメラを持つ女子は構えようともせず、怪訝そうな顔をしている。
その瞬間、全てを察して「冗談ですよ、冗談」とカメラを受け取り、2人の写真を撮影。
全部あのレスラーのせいだと、今でも根に持っている。


荒木建策