脳天、突き抜ける

2019/07/22

ランチと呼ぶには遅すぎるし夕飯と呼ぶには早すぎる、
だらしない時間に食べたのはチゲでした。
今にも煙草やを吹かしそうな、やる気のない女性2人が厨房で話し込んでいる店で、
どうせチゲもやる気に欠けるのだろうと唐辛子をわさわさと音がするほど加え、
アツアツのスープを口に含んだ瞬間、
祖母の顔と小学校の校舎と過去の栄光が走馬灯のように駆け巡り、
今日締め切りの全ての仕事を諦めることを考えました。
食べたそばから脳ミソが溶けるほど辛いのです。
舌の上でラモーンズがライブをしているかのような辛さといえば伝わるでしょうか。
アフリカ生まれの暴れ馬が駆けずり回るかのような辛さといえば伝わるでしょうか。
伝わらないでしょうか。
ともあれ、男たるもの辛みになんぞに負けてなるものかと、
今の今まで水も飲まずに耐えてきたものの、もう限界です。
冷凍庫にしまってある白熊を貪りながら、さっさと諦めボタンを押したいところですが、
押した途端にもう間もなくデッドラインを迎える仕事が2本とも吹き飛ぶことを考えると、
ここはやはり耐え続けるべきなのでしょう。


荒木建策