優しくなりたいな

2019/07/15

「煙草がいぶってんじゃねーか、バカ野郎!!」新橋のベローチェ店内。
若者の吸ったタバコの火が完全に消えておらず、
吸い殻から煙が出ているのを見た中年男性が、その若者を叱り飛ばした。
それは確かに若者が悪い。
全面的に悪いが、そのおっさんの怒鳴り声で集中力を切らしてしまったこちらもエラい迷惑なのだが…。
冬をどこで過ごしていたのか、私が住むアパートの庭には、この時期になるとカエルが出没する。
住人の中には極端に嫌う人がいて、何の躊躇もなくカエルを蹴り殺してしまう。
その現場を目のあたりにするたび、怒りにも似た感情が湧くのだが、
今もってやめなさいよと言えずにいるのは、
私だって部屋に紛れ込んだ蚊やコバエを見つけたら、丸めた雑誌でブッ叩くからである。
コバエは平気で殺すのに、その人を見て何故怒る。
そう、人は皆、自分勝手なのである。
慎ましく生きているつもりだって、社会生活を営んでいる以上は他人に、自然に、この星に、もう迷惑かけっぱなし。
勝手気ままな振る舞いを続けているのだという自覚があれば、他人に意見する時にも、
もっと優しくなれるのではないかと、どうもギスギスした店内で思った。


荒木建策