球児と私

2020/06/01

今年は中止になってしまった甲子園だが、テレビに映る球児が、
三振してベンチに走って帰る姿がまぶしく見えるような心理状況と言ったら分かりやすいだろうか…。
…気温34度、日光が容赦なく降り注ぐグラウンドは想像を絶する暑さに違いない。
川口春奈(五島列島出身)かソーダ味のガリガリ君か、
どちらか選べと言われたら、迷うことなくガリガリ君を選択するに違いない。
カウントはツーナッシング。
観客はワーッ、頭の中はボーッとする暑さの中、3球目をフォークでストンと落とされて三球三振。
スタンドから聞こえてくる声はワーッではなく「あーあ」である。
君はバットを天高く放り投げ、ピッチャーに詰め寄ろうとするだろう。
「遊び玉はなしかよ」。ツーナッシングからの3球目を挟むのかよと、
君でなくともピッチャーに詰め寄ろうとするだろう。
しかし、バッターボックスとマウンドの間に立つ蜃気楼を見て、君は思い直す。
この暑さは自分のみならずピッチャーも骨身に応えているはず。
遊び玉を投げるほどの体力が、彼には残されていないのではなかろうか…。
身勝手な考えで腹を立てた自分を、君は恥じる。
すぐにでもこの場を離れたいとの思いから、おそらくは逃げ帰るようにベンチへ走ったのだろう君が、
今の私はとても羨ましいのである。
私だったら間違いなく担架を呼ぶ。
うだるような暑さに弱った身体をさらし、
その上、三振まで食らったら走るどころか歩いて帰る自信すらないから、
バッターボックスで寝ながらベンチに電話して、担架を回してもらうだろう。
その感覚が24時間ビッシリと身体に張り付いていると言えば、
皆様には今の状況をお分かり頂けると思う。
これから還暦を過ぎた制作会社のプロデューサーの(リモート)バースデーパーティーである。
嫌な要素、どんだけ盛るねん!!


荒木建策