「怪しい者ではありません」

2020/06/04

今村記/

人生で初めて口にした「怪しい者ではありません」

たまたまトイレに起きたついでに、
今こそ3密を避ける行動時間帯なんじゃ…?と寝ぼけ眼で思い立って、
24時間営業のスーパーへ買い出しに行った早朝4時。
自粛生活で確実に運動不足なので、
誰もいないのをいいことに、
あえて遠回りして歩道橋を昇り降りしていたら、
少なくとも80歳は超えていそうな小柄なご婦人が、
背中のリュックに加え、両手にたいそうな荷物を持って現れ、
2、3段ごとに休憩されていたので気になって、
「お手伝いしましょうか?」と声を掛けた折、
一瞬、はっきりと警戒されてしまったので出た言葉です。

改めて客観的に見れば、
まんま怪しいと思われても仕方ない、
一生使うことなどないだろうと思っていたはずの詐欺師的フレーズが、
咄嗟に口をついたことに自分自身こそが一番驚いたものの、
流れで交わした世間話の中で、全く他意はないとわかって頂けたようで、
じゃあ、お願いするわね、と託された荷物が、見た目以上に激重。
よくここまで運んできたなと感心するほどの重量なので、
今度は私が5、6段ごとにフーフー息を上げることとなる中で、
そのご婦人は無邪気に、
「私、OOハルコっていうの、春に生まれたから」
「私は芸能人や政治家を筆頭とした著名人相手の芸者だったの」
「だから私にとって今は早起きしたわけじゃなくて、まだ夜の延長なのよ」
「でもこの時間はすいているからいいわよね?」
「今でも歌手xxやoo大臣にアドバイスしているのよ」
と矢継ぎ早におっしゃっておられたのは、繰り返しになりますが早朝4時。

真偽のほどは知りようもないので、
へぇ~とか、ほぉ~とか、鉄板の"は行"で相槌を打つのが精一杯なまま、
歩道橋を渡り終えた後も数十分、ご婦人が自伝、自説を話されている間、
おそらく一切の意図もないでしょうが、
結果的に大荷物で私の筋トレにご協力下さったのは間違いないので、
新しくできたお友達、ハルコさんが、
今後も無理することなく、お元気で過ごされるよう願っています。


MPPシステム/プランニング担当・今村