クリスマス

2020/11/02

荒木建策(放送作家/ アリゴ座主宰)

ハロウィンが終わり、いよいよ街はクリスマスムードへ。
近所のカフェの店番テディベアは、もうサンタクロースのコスプレをさせられている。
テーブルの上でロウソクがゆらめくレストランで食事して、鮮やかな色のカクテルを頂いて、
半年前に予約したホテルで夜景を楽しんで…。
そんなクリスマスは、ホットドッグ・プレスの中だけの出来事だと知ってから、
クリスマスは思い出したくない様々な記憶とともに、心の宝箱にそっとしまったはずだった。
そっとしまって南京錠までかけたのに、イブの夜に電話が鳴るとどうしても、
宝箱を開けてしまう私がいる。
「もしもし、今、一人で駅前にいるんだけど」
美しいピアノの先生とか、かわいらしい花屋の店員とか、熟れた小料理屋の女将とかから、
ささやくような声でお誘いがかかるのではないかと、
知り合いにそうした女性はいないのに、電話が鳴るたび思わず期待してしまう夜。
電話はまあ大体原稿の催促なのだが、ADさんからの着信にドキッとしてしまうあの感じを
今年も味わってしまうのだろうか?
それとも、クリスマスも自粛ムードでいつの間にか終わっているのか…?
とりあえず南京錠の鍵は目黒川に投げ捨てようと思います。