テーブル席

2021/02/15

荒木建策(放送作家/ アリゴ座主宰)

カウンターが10席弱、4人掛けのテーブルがひとつといったラーメン屋に入ったら、
テーブル席しか空いておらず、そこに案内された。
さすがに私も気が引けたが、まあラーメン屋は回転も早いし、最悪、相席になってもいいやと思って席についたら、
その30秒後に男女4名の若いグループが図ったかのように来店。
当然、あのおっさん、なんでテーブルに座ってんの?みたいな目で見られた。
そりゃ、私だって謝りたいですよ。
なんだったら立ち食いラーメンでもいいし、誕生日席に座ってバイト先のあいつの悪口なんかに相づちを打ちますよ。
そこのコショウを取ってくんなーいとか。グループに溶け込むことだってできますよ。
ただ、移動しようにもカウンターはまだ空く気配はないし、ここで私が立ち上がろうものなら、
カウンターの客や店主に無言のプレッシャーをかけることにもなりかねない。
若者だって良心があるなら、おっさんが店の隅に立ちながら、ラーメンを食べていたら心が痛むだろう。
それならば、悪者になるのは自分だけでいい。
テーブルでそわそわしながら、腕を組み、
こちらを睨みつけるような写真でラーメン情報誌に載っていそうな店長を見つめる。
お願い、メンマとか入れ忘れてもいいから早く持ってきて。
ダイの大冒険を読みながらゆっくりラーメンを食ってる大学生、
俺が貸してやるから今日のところは早く帰ってくれ。
おい、店長、スピードスケートのスタート直前みたいな謎のフォームで湯切りしてる場合じゃないよ!
そんな時間、俺にはないんだ…って、あらっ、あっさりカウンター客が食べ終わったよ。
というわけで、自ら名乗り出て、カウンターへ移動。
約3分ぐらい、若者の視線に耐えながら生きた心地のしない時間を過ごした。
ちなみに、ラーメンはおいしかったです。
ええ、今回は落ちつかない話ということでご勘弁を。