リスになりたい

2021/06/14

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

あなたはリスをご存知だろうか?
などと書き始めたら、バカにしているのかと怒られそうだが、
何はともあれ、リスというのは可愛くて綺麗好きで憎めない奴なれど、
残念なことにおバカさんで、
頬袋に10日かかっても食べ切れないほどのエサを詰め込んだら、
巣に戻ってそのエサを隠す。
と、隠したことをすっかり忘れ、再びエサを山と詰め込んでくるものだから、
ちょっと目を離した隙に巣はエサだらけになっているのである。

私は今、猛烈にリスに憧れている。猛リスである。
コロナ禍だが幸いにも仕事量は以前と変わらぬどころか
増えているくらいだし、毎日忙しくさせてもらっている。
ところがだ、
どれだけ働いても得たエサを食べる機会がないのだ。
元々物欲がほとんどない上に、
今や食にすら興味がなくなった。

無理やり使おうと高い服を買ってみた。
出掛ける機会がなかった。
大量の漫画を買ってみた。
これ以上、目を酷使したくなかった。
パソコンを買ってみた。
エサを集めるための道具だと気付いた。
友達にプレゼントをあげてみた。
これは、悪くなかった。

野山を駆け回って集めたエサ。
食べずして、また明日も野山へと駆け出す。
今日、必死で集めたことを忘れて。
リスになれたら、どんなに幸せなことだろう。