超人

2021/09/06

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

10年くらい前に、
ある動画を観て戦慄が走った。

その映像は、東南アジアの国の
トランプを製造している工場で
カードを箱詰めしている様子を映しているものだった。

そこに映っていた男性。
数千枚はあろうかというトランプの束に手を伸ばし、
ひと掴みすると、それが正確に54枚(52+ジョーカー2枚)。
それを当たり前のように次から次へと箱詰めしていく。

「この人ヤベー!!」と思って観ている中、カメラが引くと、
周りで働いている人の全員が同じスピードで、
カードの束からワンタッチで54枚のカードを取って箱詰めしていた。
心底、「嘘だろ!?」と思った。

人間は、時に超人的な能力を発揮する。

例えばパラリンピック。
銀メダルに輝いた車椅子バスケの日本チーム。
車椅子を操作しながらドリブルして、
敵チームに気を配りながらシュートを決める、って
超人以外の何物でもない。
普通のバスケットボールより大変なことをやっている。

目が見えないのに100メートル走10秒台、
両脚がないのに走り幅跳び8メートルジャンプ。
ラケットを口にくわえて卓球。
超人!超人!超人!

しかし、彼らが特別な力を持って産まれたのだとは思わない。
きっと繰り返しの力なのだと思う。

前にも書いた気がするが、
私はパソコンのカーソルを狙いの位置に持っていくのが
異常に速いらしい。
以前、実家で作業している時に後ろで見ていた弟が
「速っ!!」っとリアクションしたことで気付いたのだが
毎日10時間以上20年パソコンと向き合う内に
いつの間にか、私は「カーソル超人」になっていたようだ。

繰り返しの力はゴイゴイスー。
スポーツマンはもちろん
ホテルマンだったり、
タクシーの運転手さんだったり、
ショップや飲食の店員さんだったり、
漁師だったり、農家の方だったり
サラリーマンでも、
もちろん、役者でも脚本家でも
何かしらを繰り返すことで
超人的な能力を手にできる可能性が人間にはある。

続けて、続けて、それを得られるまで、
やるかどうかだと思っている今日この頃。
​​​​​​​私は続けようと思います。