ケアル

2021/11/01

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

大人になるにつれて、
子どものころにくらべて痛みに強くなり
涙を流すということはなくなるが、
今朝早くふくらはぎに激痛が襲来し、
その痛みにバタバタしていたところに
スマホ充電器を踏みつけて朝からちょっと泣いた。

痛みに脳が反応するよりも先に、
フライングの涙がこぼれたような気がしたが、
それはきっと情けなさから来るものだったからだろう。
痛みは心の方が重い。

朝から俺はなにしてんだ…。
人はたぶん、悩みの中で生活していて、
わずかな楽しいことでごまかしながら今日を生きている。

とある女性が言っていた。
「私はね、平日は楽しくもない仕事をやっていて、
週末の休みを楽しみに生きているの。
金曜日と土曜日の夜は本当に楽しい。
だから、平日の嫌なことも頑張れる」

何かをモチベーションにすることで元気が出て、
嫌なことにも立ち向かえる。
自分にとって、楽しみとはなんだろう。
競馬は性に合っていないし、
プラモデルなんかは大量のゴミが出そうで嫌。

将棋はどうだろう、と思ったこともあった。
たしかに、将棋はおもしろい。
お金はかからないし、
私のような引きこもりにはうってつけだが、
負けたときのダメージといったらない。

私はアマチュアだ。
負けたからといって何かを失うわけではないが、
負けたときの悔しさは、自分を呪うほど。
自傷行為に走りたくなるぐらい悔しいのだ。
精神衛生上、これはよくない。

こうなったら、読書しかない。
文章力を鍛えれるし、教養も身につく。
そう思っていたけれど、
読んで鬱になる本もある。

映画やドラマもそう。
内容によっては思い出したくない心の痛みを、
ざっくざく掘り起こすようなものもある。
日常に何の癒しもない。
むしろ、修行ばかりで、
今、私の心には黒い雨が降っている。
これを乗り越えれば虹がかかるのかもしれないけど、
何をどうしたら、暗い気持ちから抜け出せるのだろう。

心はまだ晴れない。
晴れないが少しだけ救ってくれたのは、
テレビのお笑い番組だった。
いつもそばにあったが、
仕事になってからは素直に楽しめなかったもの。

たった一瞬、たった一瞬なのだけど、
陰から陽へ連れて行ってくれるときがある。
こんなすぐ近くに救ってくれるものがあったなんて
気がつかなかったなぁ。
大事なものはすぐそばに。

もっとテレビを愛そう。
もっとお笑いを愛そう。
そう思った。