はじめての占い

2022/07/04

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

構成を担当しているバラエティ番組で、
占い好きのゲストのために
当たると評判の占い師を
呼ぶことになった。

打ち合わせのときにADさんが
試しに占ってもらったところ
「すっごい、当ってます」と言うので、
「僕もお願いします」と乗っかってみた。

スカーフのような布を頭から被った
いかにもな風貌のおばさん占い師。
しかし、彼女の口調はとても穏やかで、
話しているだけで眠気が襲ってくるような
優しさがあった。

名前と生年月日を伝えると、
いきなり「芸術家にぴったり。
絵を描いたり、文筆系がいい」とのこと。
才能に気づいてくれる人がいるかぎり、
必ず大成するはずだと言う。
自分からグイグイいくタイプじゃないから
周りの後押しが必要らしい。
他力本願か...。

続いて健康運。
こちらはタロット占い。
出てきたカードは、
そこらへんの占いショップでは
手に入りそうにない年季を感じさせる。
時計回りに3回かきまぜて、
好きなカードを3枚取れと指示されて
めくってみたら唖然。
そのうちの2枚は素人目でも
不吉さを感じるカードだった。

ひとつはビルに雷が落ち、
そのビルの先っぽが折れている絵。
もう一方は足首を結ばれた男性が
逆さに吊るされている絵。

「先生...これは?」

不安のあまり、
怪しいおばさん扱いしていた占い師を
いつのまにか先生と呼んでいた。

そのカードがめくれた瞬間、
眉間にシワを寄せた先生が言うには、
42歳から68歳にかけて
健康に気をつけろとのこと。

「期間長っ!」

健康への不安の前に
範囲の長さへのツッコミが
先に声に出てしまったが一応気にしておこう。

最後に総括としてアドバイスをもらった。

「とにかくあなたは他人を信じなさい」

わかりました。
先生を信じて
絵の世界で頑張ってみよう。

そう思い、
試しに番組キャラクターの絵を描いたら
あまりの不評に42歳を待たずして
心の健康が害されそうだったので、
しばらくはこの仕事を
続けてみようと思います。