ネコ科の話

2022/08/15

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

突然の痛みで目が覚めた。
痺れているのか攣っているのか捻っているのか、
兎に角両足が痛い。

なんだ、この痛みは。
ふと思い出す。
「虎」に噛まれているのかと思った。
これは、最近痛風になった知人の弁。

この言葉がリフレインして軽いパニックに陥ったが、
痛みの箇所を冷静に探るとどうやら足の裏のようだ。
痛風は踵やつま先など先端に痛みが出ると言うし、
虎に噛まれているような感覚でもない。

さらに落ち着いて症状をネットで調べると、
足底筋膜炎の症状がピタリとあてはまった。
とにかく足裏が痛く、接地する度に激痛が襲ってくる。
足首を捻挫したときの痛みに似ているが、
その数倍は痛い。

足底筋膜炎は、
立ち仕事など日頃から足を地面に足をつけている人、
スポーツなどの激しい運動をする人が患うようだ。
サッカー日本代表の「ジャガー」こと、
浅野選手も足底筋膜炎に悩まされたひとりだそう。

私は寝仕事はしても立ち仕事はしないし、
スポーツもしなければジャガーでもない。
強いていうなら、自宅から最寄り駅まで
徒歩10分近くかかるため、往復で20分、
出先での移動も考えると、どこかへ出かける場合は
必ず1時間以上は歩いている。
まあ、同じくらい歩く人はたくさんいるから、
そんなことで足底筋膜炎になるのだったら、
この世はゾンビ歩きの人であふれているはずだ。

結局、突如の痛みから3日目ぐらいに
ようやく歩けるようになったが、
まだ万全じゃなかったのか、
自宅を出て5分ぐらいで痛みがMAXになった。
行くも地獄、戻るも地獄の状況だが、
数日後に友人の誕生日を祝うことになっており、
プレゼントを調達するならこのタイミングしかない。
痛みを軽減できる歩き方はないかと考えていると
「猫のように」という登山用語を思い出す。
ヒッソリ、しなやかに。
そうやって歩いてみると心なしかマシに。
途中で心が折れそうになりながらも歩く。

足を引きずって、好奇の目にさらされつつ、
ようやくたどり着いたのは渋谷ヒカリエ。
しかし、何故か店内が暗く、
入り口にはコロナ禍で時短営業中の立て看板が。
通常より1時間遅い11時オープン...。
ただ、立ち尽くすしかなかった。