出前とわたし

2017/03/27

ここ最近、ヘビーローテーションで出前を頼む中華屋は、
天津飯とチャーハンがそこそこで、レバニラはぼちぼち、広東麺はまずまずといったところだが、
最も味があるのが出前を持ってくるオヤジのくだけ方なのである。

初めて出前を頼んだときは、広東麺を置いたら、
「またおねやいしゃ~す!」とだけ言って帰っていった。

2回目からは、「今日は寒いですね」、「今夜は降りそうですね」
といった天気の話をふられるようになり、
今では天気、野球、サッカーと一通りの世間話をしてから、
最後に私の目をガン見しながらの「またおねやいしゃ~す!」でシメと、
いつしかオヤジと私は出前以上、友達未満の関係となっていた。

違和感なく、自然に相手との距離を縮める。
これはなかなか難しいことである。

私なんぞ、とある女性Pを前にすると今でもカチカチ、
「はい」と「いいえ」と「なるほど」と「さすがですね」しか出てこない。
買い手と売り手以上の関係を築いたオヤジに一つ頼み事をするならば、
上手なくだけ方をレクチャーしてもらうのもいいが、
最近は、飲みに行く暇もないほど忙しい上、そもそも広東麺がのびる。
器をさげるときならまだしも、出前を持って来たときはさっさと帰って欲しいのである。


プチ人見知り作家 荒木建策