略してペリペイ

2023/01/09

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

私は今、長崎に滞在している。
毎日のように出島付近を通るのだが、
出島を最初に見たときの感想は、
訪れたことのある人なら満場一致の
「ちっちゃ」だった。

出島の面積はサッカー場2面分しかない。
この小さな人工島が約200年の間、
わが国で唯一西欧に開かれた地だったとは
初見では想像だにしないことだろう。

1853年、
鎖国していた日本に開国を求めるために
やってきたのが黒船でおなじみのペリーだが、
何のためにアメリカが日本に開国を迫ったのか
知る人は少ないのではなかろうか。

日本近海にやってくるアメリカの捕鯨船に
水や食料の補給を行うことがその目的。
当時、欧米ではランプ用の油として
クジラの油、つまり鯨油が使われており、
捕鯨が一大産業をなしていたからなのである。

石油が世界的な産業となるのは、
その6年後、
1859年にドレーク油田が発掘されたのがきっかけ。
この発見がなくペリーがもう少し早く来ていたら、
未だに捕鯨が産業として残り、
ランプの灯は鯨油なのかも知れず、
レジ袋などない世界だったかも知れない。

先日、
本田圭佑氏がTwitterで
コンビニで買い物をした際、
会計した後に「袋をください」と言ったら、
3円の支払いを求められて
カードで決済したという話を載せ、
「これって俺が悪いの?」と問いかけたのが
バズっていたが、
ペリーが早く来ていたら、
この出来事もあり得なかったのかも知れない。

実は先日、
同じような出来事がわが身にも起こった。
私は、カードではなくID決済で
3円を支払おうとしたのだが、
IDが11円以下の支払いに対応しておらず、
1万円札で3円のレジ袋を買うという
なんとも非効率なことに陥ってしまったのである。
面倒臭そうな態度の店員に、
「これって俺が悪いの?」という言葉が
のど元まで出たが、なんとかセーフ。

タイムトラベルが実現したら、
ペリーを急かそうかとも考えたが、
IDの11円問題を解決してもらうのが現実的。
それか、レジ袋有料制度をやめましょう。

ペリーと本田圭佑とレジ袋とメルペイの話。
略してペリペイ。