シングル

2024/01/01

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

新年、あけましておめでとうございます!
今年も筆を持つ情熱が尽きぬ限り、
全力で頑張る所存ですので、
皆様、何卒よろしくお願いいたします。

さて、今回は2024年最初のコラムなのだから、
ししおどしの高く乾いた音が聞こえる座敷で
書き初めをするかの如く、
ピンと背筋を伸ばし流れるようなタッチで
キーボードを叩くべきなのに、
締め切り直前になって半分寝ながら背を丸めながら、
ついでに、湿気たクッキーかじりながら、
キーボードをブッ叩いているのは、
仕事納めの31日の昼。

誰が見ても仕事をしている雰囲気ではないが、
実はそこまで暇じゃない。
コラムだとか、テレビだとか、実家の大掃除だとか、
こう見えて私は意外と働いている。

マリオRPGをプレイする以外のほとんど全ての時間を
仕事に費やしていると言っても過言ではないのに、
悲しいことにシングルなのだ。
我が実家のトイレットペーパーは、
ダブルではなくシングルなのである。
実家のくせにペラペラのシングルなど以ての外、
フワフワしたダブルの紙で頑張ったお尻を
優しく拭ってあげるのが筋ではないのか。

だって、
強敵相手にフルセットまで戦った岡ひろみの汗を、
シングルの紙で拭うコーチがどこにいる。
どんな鬼コーチだって、
そこはシングルではなくダブルでしょう。
マシュマロのようなダブルでしょう。
もちろんベストはタオルでしょう。
しかし、お尻に関してはダブルでしょうよと訴えても、
あのカラカラにセッティングされているのはシングル。
上の棚にある予備もシングル。
頑ななまでにシングルなのである。

こんなに頑張っているのに...。
どうにも頼りないシングルの紙を見つめながら、
そんなことを思う夜もある。
正直さっきも思ったが、
これはきっとエールなのだろう。
お前ならできる、やればできるという
祖母からのエールだと思って2024年、
帰省したら黙ってダブルが置いてあることを目指して
頑張ろうと思う。

余談ではあるが、
最近「一年の計は元旦にあり」の意味を
取り違えていたことに気付いた。
「元旦に起きたことがその一年の縮図である」
的な意味だと思っていたのだが、
「その年に為すべきことは元旦に計画を立てるべき」
ということだった。
つまり、元日にサボったからといって、
必ずしも年中サボり倒す年にはならないと、
そういうことなのか?

私は子供の頃からこの諺を間違った意味で覚えており、
今になって考えると恥ずかしいのだが、
この際なので、元日の朝くらいはサボらず、
2024年の計画を立ててみようと思う。