不毛な犬の話
2025/07/14
荒木建策(放送作家/脚本家)
パソコンの前に座って8時間、
ようやく原稿が一段落し、
頭と腰を休めるために布団に入る。
眠いはずなのに、
寝なくてはいけないのに、
目が冴えて眠ることができず
考え事に没頭する。
そんな微睡の中で考えるのは、
大体、ひとつも役に立たないこと。
長いこと考えている自分に、
ドラマでよくある首の後ろ辺りを
手刀で「トン!」とやって
気絶させるやつをやりたいと
切に思うのだが自分でやるには難しい。
不毛な時間。
不毛な思考。
延々に続く。
昨晩考えていたのは、
犬のトイレの近さについてである。
これをテーマにみっちり5時間、
誰よりも犬の気持ちになって考えていた。
この時期だから思い出すのか
うちで飼っていたヨークシャーテリアは、
スイカが大好きで、
そのせいかどうか分からないけど、
夏場はトイレが異常に近かった。
うちの近くの電柱という電柱に
放尿していた。
そこで思った。
犬。
あいつら、
この世から電柱がなくなったらどうするのか。
尿をひっかける場所を失い、
それが原因で全国の散歩犬はストレスを感じ、
やがて生態系にも影響が出て、
進化かもしくは退化か、
犬という種の存続すら危うくなるのではないか。
そして、
朧げな脳は物語る。
犬という種の存続の危機。
そうはいかんと抵抗する、
町内犬長を任されている柴犬の柴田。
彼が打ち出すのは、
犬民が予想だにしなかった案。
その発想に誰もが声を上げて共感する。
「おしっこ…我慢しないか?
別にマーキングとかどうでもいいだろ。
縄張りとかややこしいこと気にするな。
位置とか大きさとかお気に入りの電柱と
別れを告げるのは厳しいだろう。
ただ、いつか時代は変わって
電柱なんてなくなるんだよ。
そのとき、
トイレが近い俺たちのままだったら、
楽しい散歩が台無しだ」
これを聞いて、
犬たちは考えを改めた。
あと3年もすれば、
街から犬が片足を上げて
おしっこをする光景が完全になくなる。
なお、かりん糖を道端に排出した犬は
厳重な罰が与えられるので、
街からかりん糖が消えた。
かりん糖を避けようとして、
急なアクションを迫られ、
それが原因で足首を痛める人間が
大幅に減少したことから、
この改革は大正解だったといえる。
微睡の中、
こんな不毛な思想をしていた昨夜。
犬がここまで頑張ってくれたら
私はもっと環境を考えられるなと、
話が飛躍したところで寝落ちした。
今回のコラム、
読んでくれた方に伝えたいのは、
犬は異常ににスイカが好き、
ということだけです。
パソコンの前に座って8時間、
ようやく原稿が一段落し、
頭と腰を休めるために布団に入る。
眠いはずなのに、
寝なくてはいけないのに、
目が冴えて眠ることができず
考え事に没頭する。
そんな微睡の中で考えるのは、
大体、ひとつも役に立たないこと。
長いこと考えている自分に、
ドラマでよくある首の後ろ辺りを
手刀で「トン!」とやって
気絶させるやつをやりたいと
切に思うのだが自分でやるには難しい。
不毛な時間。
不毛な思考。
延々に続く。
昨晩考えていたのは、
犬のトイレの近さについてである。
これをテーマにみっちり5時間、
誰よりも犬の気持ちになって考えていた。
この時期だから思い出すのか
うちで飼っていたヨークシャーテリアは、
スイカが大好きで、
そのせいかどうか分からないけど、
夏場はトイレが異常に近かった。
うちの近くの電柱という電柱に
放尿していた。
そこで思った。
犬。
あいつら、
この世から電柱がなくなったらどうするのか。
尿をひっかける場所を失い、
それが原因で全国の散歩犬はストレスを感じ、
やがて生態系にも影響が出て、
進化かもしくは退化か、
犬という種の存続すら危うくなるのではないか。
そして、
朧げな脳は物語る。
犬という種の存続の危機。
そうはいかんと抵抗する、
町内犬長を任されている柴犬の柴田。
彼が打ち出すのは、
犬民が予想だにしなかった案。
その発想に誰もが声を上げて共感する。
「おしっこ…我慢しないか?
別にマーキングとかどうでもいいだろ。
縄張りとかややこしいこと気にするな。
位置とか大きさとかお気に入りの電柱と
別れを告げるのは厳しいだろう。
ただ、いつか時代は変わって
電柱なんてなくなるんだよ。
そのとき、
トイレが近い俺たちのままだったら、
楽しい散歩が台無しだ」
これを聞いて、
犬たちは考えを改めた。
あと3年もすれば、
街から犬が片足を上げて
おしっこをする光景が完全になくなる。
なお、かりん糖を道端に排出した犬は
厳重な罰が与えられるので、
街からかりん糖が消えた。
かりん糖を避けようとして、
急なアクションを迫られ、
それが原因で足首を痛める人間が
大幅に減少したことから、
この改革は大正解だったといえる。
微睡の中、
こんな不毛な思想をしていた昨夜。
犬がここまで頑張ってくれたら
私はもっと環境を考えられるなと、
話が飛躍したところで寝落ちした。
今回のコラム、
読んでくれた方に伝えたいのは、
犬は異常ににスイカが好き、
ということだけです。