おにぎりにまつわる県民性

2025/12/08

荒木建策(放送作家/脚本家)

こんにちは、おにぎり博士です。

『秘密のケンミンショー』や
バナナマンさんの『コレって何の日本地図?』の
制作に関わった経験により、
私は結構県民性に詳しい。

例えば、おにぎりにまつわるものだけでも
何個かのうんちくを言うことができる。
軽く思い浮かぶのでいうと…

まずは、呼び名。
おにぎり派とおむすび派に分かれるが、
おむすび派が圧倒的に多いのは北陸地方。
『おにぎりあたためますか』で知られる北海道は半々、
九州は圧倒的におにぎり呼びである。

次に、消費量に関して言えば、
最も多いのは東京都、
最も少ないのは長崎県である。
これについては、私が長崎出身なので、
詳しく調べてみたことがあるのだが、
おにぎりの消費量は、そばの消費量と
正の相関関係があることが分かった。
たしかに、
蕎麦屋には必ずと言っていいほど、
一緒におにぎりが置いてあるし、
長崎には蕎麦を食べる習慣がほとんどないから、
おにぎりの消費量も低いのかも知れない。

そして、形状に関して言えば、
大雑把に東は三角、西は俵型。
山陰ではボール型が主で、
中部地方では太鼓型が主流。
これは家庭で握られるものの形状の話。

家庭で握られるおにぎりに関しては、
自分が体験したショッキングな出来事との絡みで、
ひとつうんちくがある。

大学生の頃、
サークルの20人くらいで、
東京立川のおじいちゃんち(一軒家)で
ひとり暮らしをするメンバーの家に泊まりがけで
遊びにいったときの話だ。

朝、早く起きた私を含めた3名は、
まだ就寝中のメンバーのために
朝ごはんを作ることにした。
ひとりはみそ汁、
ひとりは玉子焼き、
そして私はおにぎりを担当。

他人が直で握ったおにぎりを食べられない勢が
存在することは知っていたので、
ラップをかませて握っていく。
20個余りのおにぎりを握り終え、
いざ、朝ごはんとなった訳だが、
メンバーの中のふたりが、
ラップをかませていたとて、
他人が握ったおにぎりは無理、と食わなかった。
本気で「こいつらキモっ」と思った。

それから10年ほどして、
番組のために県民性を調査しているとき、
たまたま
「他人が握ったおにぎりをたべられない人の分布図」
というものを見つけ、
何故か熊本県民だけが極端に
他人が握ったおにぎりを食べられないという
不可解な事実を知った。
そういえば、俺のおにぎりを食わなかった2名は熊本出身。

これも詳しく調べたところ、
熊本県では昔、辛子レンコンに混入した
ボツリヌス菌による大規模食中毒が発生した歴史があり、
県民は食品衛生にはかなり気を付けているらしい。

なるほど、そういうことかと
今は友達をやめている2名には、
少し…も悪い気はしていない
わたくし、おにぎり博士。