うしろ姿の話

2017/08/21

新橋での話だ。
打ち上げの帰り、飲み屋を後にして駅に向かう途中で、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
仮に「ユウカ」さんとしておこう。
ユウカさんはコンビニの前で電話をしているようだった。
ちょっと驚かしてやろう…。
若干、酒が入り、いい塩梅となっていた私の心にいたずら心が芽生えた。
気付かれぬよう忍び足でユウカさんに近づき、トントンと肩を叩いて私は即座にしゃがみ込んだ。
しゃがんだまま振り返った顔を見上げると、その人はユウカさんではなかった。
ユウカさんどころか、もはや女ですらなかった。
肩を叩かれ、ふと振り返ると、大柄の男がにやけながら自分を見上げている…。
彼は、さぞかし気味悪かったことだろうが、私はそれ以上に悪かった。バツが悪かった。
そして、早く忘れたいと願ったこの出来事を、私はもう3年も忘れられずにいる。


荒木建策