怒りの矛先

2017/12/04

いつだったか満員電車に揺られている時、音漏れが気になり、右隣の男子のイヤホンを引っこ抜いた。
「ここはクラブじゃねーんだ。重低音響かせんなよ」
男子はキョトンとした目で私をしばし見つめた後、引っこ抜かれたイヤホンを私の耳に押し当てた。
聞こえてきたのは、きみまろの漫談。
重低音の出どころは左隣の女子だった。

あの時、誓ったのだ。
もうイヤホンは引っこ抜きません。また、他人に対し無闇矢鱈に怒りませんと。

ここまで書いたところで、我がアリゴ座第6回公演の打ち上げまであと20分。もうシャワーは諦めた。
頭髪はベトついているが、顔だけ洗うことにした私が現在、心の底から腹を立てているのが、
こうなることがわかっていながら、昨夜、意気揚々と飲みにいった自分自身である。


荒木建策