移ろう季節の中で

2018/09/10

Tシャツでは肌寒く、かといって長袖のシャツだとかすかに息苦しさを感じる季節がもうすぐやってくる。
そんな季節には、いつだったかデキの悪い子供のようだと笑われたアイツの出番だろうと、
タンスの奥の奥から七分袖のシャツを引っ張り出したところ、
丁度乳首の辺りを虫に食われており、穴の開いた変態シャツに成り果てていた。
そんな残念極まりないお知らせから始める作家が、ライターが、一体どこにいるんだ。
平均寿命を物差しとするならば、人生の折り返し地点に差し掛かり、
あとは転ばぬように転ばぬように、足元の悪いところを避けながら下るだけ。
紫陽花がどうだとか、藤棚がああだとか、教師が生徒の親御さんに送る手紙のような書き出しが、
丁度いい湯加減だろうし、もう少し売れるためにもそうせねばいかんのだろうなとは思いながら、
ひとの5倍くらいおかしなことばかり起こる人生を自画自賛してみたくもなる、夏の終わりである。


荒木建策