逝ってしまったアイツ

2018/09/17

前回のコラムを執筆した後、愛用していたPCが動かなくなった。

そこで、齢35にして爺さんと呼ばれるパソコン博士に診断願ったところ
「ハードディスクの交換が必要」とのこと。

ハードディスクの交換…。ああ、アレね。なるほど~。
状況がさっぱり呑み込めないので、仕方なく照れていると、
その様子を察した爺さんが、けだるそうに言った。

「病気にかかっただけならどうにかできるけど、これはもう死んでるわけ。
身体ごと入れ替えることになるから、これまでのデータは全部消える。
作家って消えて困るものとか結構あるんじゃないの?」

…テレビではとても放送できない番組の企画書にオリジナルのアメリカンジョーク80連発。
隠れキリシタン物語の続編に、先日いとこが送ってきた銀閣寺の写真…。

悲しかった。やるせなかった。

愛用のパソコンが逝ってしまったことよりも、なによりも、
3年使ったパソコンの中に、消えて困るものが何一つないことが悲しかった。


荒木建策