不幸の連鎖

2018/09/24

また、金を落とした。

昨晩、1万5千円落とした。
お札は裸で、餃子はお酢で。

1万円札と5千円札を裸のままポケットに突っ込んでから、
本屋のレジでないことに気付くまで、およそ35分。
充足感に包まれたその35分を1万5千円で買ったことにして、全てを忘れようと試みたが無理だった。

1本500円、いいお値段の太巻きを立て続けに30本食べたことにしようとも思ったが、
太巻きは嫌いだった。

2枚のお札は風に吹かれて川に落ち、水面を彩る花びらとなったのだろうか。
風に吹かれて山まで飛んで、ヤギが食して糞となったのだろうか。

ああ1万5千円。オレの1万5千円よどこいったと、
落としたという事実をうまく呑み込めぬまま弁当屋でのり弁を頼んで、
いつもは大盛りなのに普通盛りで我慢して、豚汁や惣菜は見て見ぬふりをして、
百円玉を3つ置いて家路を急ぐ途中、のり弁を持つ右手を左手に持ち替えようとした瞬間、
持ち手がスルリと抜け落ちてのり弁は逆さまに着地。
アツアツの魚フライが、まるで生き返ったかのように2メートル先まで飛んでいった。


荒木建策