近所の気になる内科に行った話

2018/10/15

急な秋の到来により、心なしか体調が優れず、咳の出る日々が続いていた。

病は気からだというし、次は頭痛か、鼻血か、肩こりか、
何でも来てみろと言わんばかりに上半身裸で両手を広げ、敵の攻撃を真正面から受け止めていたのだが、
今朝になってくしゃみが追加され、不快なことこの上ない。

ヘック…ゴホゴホッ。咳に邪魔され、くしゃみが途中停止。

出きらない不快感に耐えかねて、家の斜め前にある内科へと向かった。

仕事は山積み、人生26番目の山場を迎えていることだし、注射でも打ってもらって、
今この瞬間だけでも楽になることを願いつつ、白衣を着た爺さんに右腕を差し出した。
爺さんは目をつむって脈を取る。

私と爺さんと受付で居眠りこいてた婆さん以外は誰もいない病院。
蛇口から落ちる水滴が、シンクを叩く音がはっきり聞こえる、ような気がする。

脈を取り終えた爺さんは、机に向き直り、険しい表情で何事かをカルテにしたためながら、静かに口を開いた。
「アンタ、手首細いねぇ」


荒木建策