旅慣れ

2019/04/01

ああ、なんて旅慣れしているのだろう。そう思った。
先日の京都旅行の際、友人Hはパンツを2枚重ねて履いてきていた。
新手の貞操帯だろうかといぶかる私に、彼は言った。
「こうすれば荷物が減るでしょ。下に履いてたパンツが汚れたら捨てればいいわけよ」。
そう言う彼の荷物は、コンビニ袋一つに収まっている。Hが輝いて見えた。
「ああ、なんて旅慣れしているのだろう」
冷静に考えれば、パンツ2枚重ねは正直ショボい。
限りなくショボいが、確かに後光が射していた。
今ある荷物のほとんどを捨て、コンビニ袋に乗り替えることはできないが、
パンツを重ねて履くことはできることに気付いた私は、
特急電車の中で、バッグの奥底にしまってあった真新しいパンツを取り出した。
こっそり取り出して広げてみたはものの、どうしてもあと一歩が踏み出せない。
奴らは旅慣れているというより単にズボラなんじゃないか、
そんな思いが邪魔をして、まだ履けずにいる荒木なのでした。


荒木建策