if…

2019/04/08

放送作家という職業を離れたら、果たして何ができるのだろう。

ネットに現を抜かし、目の前の仕事をチャキチャキこなせぬ私には、
おそらく内職が精一杯か。

例えば、栞に糸を通すとか、スウェットにゴムを通すとか。
しかも、ウエストだなんて、そんな主役のゴムを通す係は眩し過ぎる。裾だ。

「荒木さん、まだ左足通してんすか?」
「いや、でも、裾は2本あるので…」
「じゃ、聞くけど、ゴムの主役はどこっすか?」
「…ウエストです」
「でしょ?別に裾のゴムなんてあってもなくてもいいわけよ。
  となるとさ、こっちのペースに合わせるのが筋でしょ。
  なあ、何かオレ、間違ったこと言ってるかな、荒木?」

果たして、年下の先輩の嫌味に耐えられるのだろうか。
怒りに震えた指先で、うまくゴムを通せるだろうかと、
精神衛生上、決してよろしくない想像をするのはもうやめよう。
胃に悪いからではない。
何か悪いことを呼び込んでしまうからでもない。
もう、締め切りの時間だからである。


荒木建策