甘やかし

2019/06/17

シャツ1枚では肌寒く、かといって長袖のシャツだと息苦しさを感じる今の季節には、
いつだったかデキの悪い子供のようだと笑われたアイツの出番だろうと、
タンスの奥から七分袖のシャツを引っ張り出したところ、
乳首の辺りを虫に食われて変態シャツに成り果てていた。

そんな余計なお知らせから始める作家が一体どこにいるんだ。

今回は、タダでいくらでもおかわりできる制度をやめてはどうかと、
しかめ面で強く訴えなければならないのだ。
どういうわけか、多くのトンカツ屋は、おかわりに関して甘い。
ご飯、キャベツ、味噌汁食べ放題。
私が行く店はおしなべて、そのようなルールとなっている。
いくらでもどうぞと言われて断るのは難しい。
勢い込んで2、3杯は食ってやろうと、まずはキャベツと味噌汁だけで1杯目を平らげ、
おかわりを待つ時には、もうなんか普通にお腹いっぱいで、
あれだけ輝いて見えたトンカツがすっかりくすんでしまうなんてことは、
トンカツ屋の店主はおろか豚本人だって望んでいないだろう。
甘やかしてくれるな。私はそんな強い人間じゃないんだ。
しかし、裏を返せば最近私に甘いのは、トンカツ屋だけ。
そう考えると何とも物悲しい、あやめもわかぬ6月の夜である。


荒木建策