ふんがいです

2019/08/26

午前6時の東京は、雨があがり、鳥が鳴き、ひんやりした風が頬を撫でるとても気持ちのいい朝だというのに、
とてつもなく臭い。
昨日から部屋中に、5日間履き続けた靴下のような臭いが充満しているのは、
野良猫を近づけぬためにアパートの管理人が木酢(もくさく)という、
木材をああやってこうやって、最後にエイッと念じることで取れるという液体を、
親の仇の如き勢いでふりまいていったからであるわけだが、
まあとにかく木酢の臭いといったら強烈で、猫どころか正直、私が逃げ出したいくらいである。
臭すぎて頭が痛い。割れそうに痛いが、
だからといって木酢をまくことをやめたら、さらに強烈な臭いに悩まされることになるし、
誰が片付けるかで近隣と揉めることにもなる。
今日の我慢は明日への希望。
平和な未来をこの手で掴むべく、昨日から酸っぱい臭いに耐えてきたというのに、
さっき窓を開けたら、茶色い猫が庭先で思いきり踏ん張っていた。


荒木建策