疑似体験

2019/09/09

何かの偶然でたまたま私を知ったという女子がいる。
おそらく10代だろうか。
私とは親子ほどに年が離れているであろうその女子は、
TwitterのDMでちょこちょこと近況報告を送ってくるのだが、
8月の終わりに、じきにテストがあるので頑張りますと、そんなメールが届いた。
口にしなくなって久しいテストという言葉の響きが、
私を遠く離れた場所にいるお父さんにさせ、その夜、山に向かって叫んだような気がする。
頑張れよー!
本日、女子から結果が送られてきた。
「数学のテスト6点でした。荒木さんも頑張ってください」
…オイ娘、ちょっと待て。6点ってなんだ、6点って。
自慢できるのはマウスで狙った場所にカーソルを合わせる速度だけ。
睡眠の質に難ある私だって、さすがに6点は記憶にないのである。
ここはひとつ、遠く離れた父親として、
よりむしろお前が頑張れときつく叱った方がいいのだろうか。
それとも、沈黙を守り自主性を促した方がいいのだろうか。
お父さん、娘のことが心配で心配で筆が手につかず、本日は締切ギリギリの入稿である。


荒木建策