土曜日のこと

2019/09/16

ピンポンピンポンピンポンピンポン…。
チャイムの16連射に叩き起こされ、インターフォンを取ると新聞の勧誘だった。
「タオルと洗剤サービスしますんで、よろしくお願いしますよぉ」
午前9時。眠りにつく時間には、すでに朝日が昇っていた。
なので、眠気にかこつけて適当なことを言って勧誘のおっさんを追っ払い、
再びベッドに戻ってウトウトしかけた頃、
今度は昨日引っ越してきたお隣がドッタンバッタンやり始めた。
家具の配慮に頭を悩ませているのだろうか。
引っ越し直後は仕方ない。
仕方がないとは思うのだが、そういえば挨拶無いんだよなぁ。
昨日、会釈したらスルーされたんだよなぁ。
「どうも、これからもよろしく」。それだけでも随分違うのに。
「オレの先輩キレたらマジ、ヤバいっすから」、そんなこと言われたら冷蔵庫は私が運ぶのに。
隣は誰が住む人ぞ、
他人に無関心な東京砂漠とはいえ、自分が引っ越す際には気を付けなければならんなぁ…。
などと考えていると、おっとチャイムが鳴った。
ようやくか!ようやく挨拶にきたのか!
ちょっと遅いが、今回だけは許してやろう。
「あの、1ヶ月分おまけするんで、やっぱり今月からお願いできないっすかねぇ」
お前かい!


荒木建策