キャビア

2019/10/21

世界三大珍味のひとつであると聞かされた時から、妄想ばかりが膨らみ、
いつかはキャビアを、山盛りのキャビアをと固く心に誓い、
どんなに安い仕事も、もはや雑談でしかない打ち合わせも、
キャビアを口にするための試練に違いないと言い聞かせながら耐え忍んできたというのに、
いざ食する機会を得て、クラッカーの上にこんもり盛られたキャビアを震える右手で口に放り込んだところ、
チョウザメには悪いが、小粒で生臭い鼻くそとの印象しか抱けなかったあの時を思い出したのは昨日のこと。
鼻くそキャビアから数年後、何かの機会に再び食したキャビアは美味だった。
最初のものはよほど質が悪かったのか。
たまたま機嫌の悪いキャビアに当たってしまっただけで、本当は私におあつらえむきのアレだったのではないか。
明日もう一度だけ確認しに…。いや、まだアレなのでもう少し先にしておきます。


荒木建策