地獄月間

2019/10/28

今月に入ってから、地獄が続いている。
舌を抜かれたり、針山の上を歩かされたりといったような、見た目にわかりやすい地獄ではない。
鼻毛が出ているんだけれど、それを指摘できるほどの仲ではない人と、
日がな一日得意先周りをやらされるような、
ジワジワと体力を奪われるぬるい地獄に、すっかり滅入っているのである。
理由はわかっている。
ドリンクバーだ。
神への誓いを破り、ファミレスでドリンクバーを頼んでいないのに連れのコーラで唇を湿らせてしまったせいである。
だが、誰にだってせこい部分はあるじゃないか。
そのせこい部分が、私の場合はドリンクバーだったというだけのことなのだが、
ドリンクバーの神様はそんな事情を汲んではくれないようである。
昨日行われた先輩の結婚パーティー。
「荒木さん、ナンパしないんですか」などとそそのかされ、
よっしゃやってやる、モテないお前のためにナンパしてやると、
すぐ側にいた美人に声を掛けようとしたら、友人がそっと耳打ち。
「荒木さん、マズいっす!その人はOO先輩の彼女っす!」
早く言えよバカ野郎、余計な火種作ってどうすんだと、
今度は奥にいた美人めがけて突撃しようとすると、またも友人が耳打ち。
「荒木さん、その人もマズいっす!新郎の妹さんっす!」
笑えないコントのようなことを繰り返している内に、酒がグルグル回って大暴れ。
自宅に戻って頭を抱える羽目になるとは、やはり私が身を置いているいるのは、
今も完全にぬるい地獄であるわけなのである。


荒木建策