徒歩メット

2019/11/04

これからロケハンだというのに会議室で上着を忘れ、寒そうにしていたら、
何を思ったのかAD永田がヘルメットを貸してくれた。
初めての体験となるヘルメットを装着しての街ブラは、まさに新たな発見の連続だった。
材質は鉄か、鉛か。
空を見上げたらそのまま後ろに倒れてしまいそうなほどに重いが、
防寒具としては悪くない。
夜風は冷たく、トレンチコートを羽織る人もチラホラ見掛けるというのに、
頭部に熱がこもった私はTシャツ1枚でもホカホカである。
ハゲの進行にさえ目をつむれば防寒にもってこいであることに加え、
たとえ事故に遭っても多少のことなら耐えられそうな気がする。
いやもちろん、財布をすられるとか、別れ話が縺れた元カノに遭遇するとか、
お金や女性に関係する事故はマズい。
コツッと触れる程度の交通事故や、たまにみる放送事故ぐらいなら耐えられるとは思うのだが、
やはり徒歩でメットはゴキゲンな国の人にのみ許された権利であることを、
バッタリ出くわしたチーフプロデューサーの弱り切った表情で知った。


荒木建策