プラシーボ?

2020/02/17

物語の中の37歳は、薄毛でメタボで腰痛を患う縒れたスーツのおっさんと相場は決まっている。
くしゃみをした瞬間に腰に激痛を覚えて悲鳴を上げ、
おっさんというカテゴリーからは、もはや逃れられないと自覚した昨年の11月。
これからは無理をせずに生きていこうと誓ったはずなのに、
さっき飲み屋のおねえさんに乗せられ、やらかしてしまった。
大学の同期と向かった飲み屋、あだ名があるとすれば「ぶたまん」の女性に年齢を告げると、
「ウソ、見えな~い」なるありがちなリアクションが返ってきた。これもおそらく料金の内。
真に受けず、落ち着き払って飲んでいたわけだが、
「ホントは20代なんでしょ」ぶたまんにそう繰り返される内、いつしかLemonを歌っていた。
米津玄師のLemonをモノマネを交えて歌う様は、完全に25歳の頃の私だった。
A型のずぼらな男子もA型は几帳面だと繰り返されれば、
枯れそうな花も「綺麗だよ」と繰り返されれば、
はたまた37歳のおっさんも25歳だと繰り返されれば、いつしかその気になる。
ならば、お前は天才作家だと繰り返されたら、誰もが爆笑するネタが思い付くのではなかろうか。
よし、ちょっと、うちの劇団員に電話して…と思ったが、
Lemonで全力を出し切ったし、酔いが覚めたらただのおっさんだし。


荒木建策