ある通知

2020/09/28

荒木建策(放送作家/ アリゴ座主宰)

若者が商品を床に叩きつけ、カウンターを蹴り飛ばし、さらには店員の襟首をひねり上げていた。
たまにいる、接客態度が極悪の店員。
その気持ちはわかる。
私だって無礼な店員の首を、心の中で何度締めたかわからないが、ヤメた方がいい。
今後、手が後ろに回るようなことは控えた方がいいだろう。
何故なら、先日、うちのアシスタントにあるものが届いたから。
それは、裁判員の通知である。
刑事裁判に参加して、有罪か無罪か、有罪なら量刑はどの程度か、あれこれ意見を出す裁判員。
その候補者に届く通知を、あの娘が待つことの意味をキミは理解しているのだろうか。
選挙権を持つ人は皆、選ばれる可能性があるということは、
「あそこに長い髪の人がいますよね。誰かに似てません?金八先生。ワタシにはそう見えるんです。
 まるで先生に見られてるみたいなんです。緊張して喉に通らないんです。だから残していいですか?」
などとのたまう、ロジカルとは真逆の国に住む人に裁かれるかもしれないということ。
選ばれてしまえば、もはや私にはどうすることもできず、代わりにすみませんと謝る他ない。
だから、手が後ろに回らぬようくれぐれも注意してくださいよと、
大暴れしたキミに限らず皆さんに、声を大にして訴えたい私なのである。

荒木