歌の本質

2020/11/16

荒木建策(放送作家/ アリゴ座主宰)

歌は情熱。歌は心。
上手い下手はさしたる問題ではない。
先週カラオケでキンモクセイの『二人のアカボシ』を感情たっぷりに歌い上げたところ、
同席していた友人Hがさげすむような口調で「それ、本気で歌ってるんですか?」などとのたまうのである。
学生時分、合唱隊に立候補したらあっさり蹴られた。
友人の披露宴でケミストリーを歌おうとしたら、結構な勢いで制止された。
何も分かっちゃいない。
歌とは何かを履き違え、技巧でしか優劣を決することの出来ない可哀想な人達である。
HもHだ。
Bメロが終わる直前、ウインクしつつ奴の方を振り向くと、
こちらを見て照れるどころか次に歌う曲を必死に探していた。
タンバリンぐらい叩いたってバチは当たらないだろう。
このところ、小学校の体育館から毎日のように「仰げば尊し」が聴こえてくる。
卒業式にはまだ早かろうという感想は別として、
「今こそ別れめ~」の「め~」の部分は教師の指導が足りないような印象を受けるが、
子どもたちの歌声は先週の一件でカサカサになった心に染みる。
歌は心、上手い下手は関係ない。
だから、何はともあれカラオケに行ったら人の歌は下手でもしっかり聴いていろと、
私は声を大にして言いたいのである。