荒木建策（放送作家/ アリゴ座主宰）

外出すると一歩間違えば死に至る病に感染するかも知れないこの時期に、
散歩を覚えてしまったから、さぁ大変。
歩いたことのない道を歩く。
たったこれだけのことが、どうしようもなく刺激的であることに気付いてからは、事あるごとに歩いている。
ただ、急に知らない森に向かって歩き始めるといったリアルインディ・ジョーンズは危険だ。
まずは、近所のスーパーへ裏道を通って買い物に行くくらいがベスト。
見知らぬ道を歩くことに慣れてきたら、最寄り駅のひとつ前で降りてみるとか、
無理のない範囲で距離を少しずつ伸ばしていけば、
健康にもいいし、まだ見ぬ世界から何かを感じ取ることができる。
歩いていると様々な出会いがある。
先日、家から少し離れたところを歩いていると、大きな幼稚園を発見。
グラウンドで子どもたちが遊んでいるのを眺めていたら、こっちも楽しくなった。
自然に笑みがこぼれ、しばらく見ていたら、園児の一人が私に気付いて叫んだ。
「あっ、カレーパンマン！」ZARAで買ったカレー色ニットを着ていたからだろうか。
君たちからすれば、おっさんの私がカレーパンマンに見えるその感性、これからもずっと大切にして欲しい。
歩いていれば、普段は起こらないようなことに遭遇する可能性がある。
もしかしたら泥棒に間違われるかも知れないし、蜂の大群にロックオンされるかも知れないが、
素晴らしい一期一会があなたを、私を待っている。