ヤドカリ

2021/03/29

荒木建策(放送作家/ アリゴ座主宰)

すぐにネガティブな思考に走る人は大きな楽しみを見失っている。
先日、整体の先生に、これまで何千人の身体を診てきたけど、
これほど身体が硬い人と出会ったことは初めてだと、地球外生命体を見るような顔で言われた。
「なんというか、頑固なヤドカリみたいですね…」とは先生の弁である。
なんだそりゃ。独特な例えすな。
しかし、ネガティブな人間なら、項垂れるところだが、私はガッツポーズ。
よし、それを治してみろと、頑固なヤドカリの足首やふくらはぎを、
カモシカのような柔軟なものに進化させてみろと。
そう、私は希望に満ち溢れている。
人間を最後に突き動かすのは、金や名誉でもなく希望だ。
自分が諦めなければ、なにか劇的な変化が訪れるかもしれない。身体の硬さもそう。
前屈運動を見て、荒木さんの身体は致命的に終わっていると先生に言われても、
俺はここからスタートするんだ。
「わざとじゃないですよね?それが本当に限界なんですよね」と、
疑いの視線を向けられた前屈。
どこまで指が届くようになるのか、そこにあるのは絶望ではなく希望である。
エスポワール。
未来は僕らの手の中。