犬の気持ち

2021/04/05

荒木建策(放送作家/ アリゴ座主宰)

机に座って10時間、やっと原稿が一段落して布団に入る。
眠いはずなのに、目が冴えて寝つけず、考え事に没頭する。
寝なきゃいけないのに、一ミリも役に立たないことを考えている自分に、
パンチの一発でも入れて気絶させてやりたいとも思う。
「犬と電柱について」。
昨日はこれをテーマにみっちり2時間、誰よりも犬の気持ちになって考えていた。
このところ、様々な自治体が、電線を地中に埋めて電柱を無くそうと動いているが、
あいつら、この世から電柱がなくなったらどうするのか。
マーキングする場所を失い、それが原因で全国の散歩犬はストレスを溜め込み、
やがて犬限定の謎の病が蔓延り、犬という種の存続すら危うくなるのではないか…。
そうはさせまいと、町内犬長を任されている2丁目の柴田犬左衛門が打開策を打ち立てる。
それは、犬民たちが予想だにしなかった発想で、誰もが遠吠えで共感する。
「もう、マーキングとかやめない?街は皆のもんやろ。
 お気に入りの電柱と別れを告げるのは厳しいだろうけどさ、いつか時代は変わって電柱なんてなくなるんだよ。
 そのとき、標識の支柱とかを取り合ってケンカが発生したら、楽しい散歩が台無しだ」。
こうして、犬たちは考えを改める。
あと5年もすれば、街から犬が片足を上げる光景が完全になくなることだろう。
犬たちがここまで頑張ってくれているのなら、
私たち人間は、もっと環境について考えられるのではないか。
話が難しくなってきたところで睡魔が襲ってきました。
おやすみなさい。僕は今日も生きています。