ジャムおじさん

2021/05/03

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

先日、小6で「大沢たかおに似てる」と言われて以来、
25年言われ続けた私の歴史を塗り替えるパンチラインが炸裂した。
リモート会議の最中、ADちゃんが
「荒木さんって、若いころのジャムおじさんに似てますよね?」と
のたまったのである。
20文字そこらの言葉に突っ込みどころが
ここまで含んでいることはそうそうない。
パン要素はどこからきたのか。
若いころってなんだよ。
そこまで変わってないだろ。
結局おじさんだし。
こいつはただのバカだ。
そういう結論に至ったのだが、
後日、運命を予感させる出来事が起きたのである。
その日は朝からイヤホンの調子が悪く、
音が途切れるような状態になっていたので、
仕事帰りに大型の家電量販店にイヤホンを買いに行った。
そこは驚くほどの品揃えで、安くて1000円。
高いものでは6000円のイヤホンがズラリと並んでいた。
移動中に音楽を聴いたり、動画を見るぐらいだから、
それに適した5000円ぐらいのやつでおすすめはないかと、
近くにいた女性店員さんに尋ねたら、
詳しい者を呼んでくると伝えられた。
なるほど、これだけ種類があれば、
イヤホンの専門知識を持った人もいるのだなと感心して待っていたら、
やや離れた位置からお客さまこちらですと声がかかった。
そうか、すでにスタンバイしていて、
そこにおすすめのイヤホンがあるんだなと近づくと、
その店員さんはこう言った。
「お客さま、少し前までは品薄でしたが、最近は流通するようになって、
お手ごろなやつもあるんですよ。私がおすすめしたいのはこちらです」
そう言っておすすめされたのが、ホームベーカリーである。
パンは作らねーよ!俺がほしいのはイヤホン!どこでどう伝わったら、
俺がホームベーカリーを欲しているおじさんになるんだよ!
バカADもバカ店員も、もしかしたら未来人で、
俺の天職がパン職人であることを暗示していて、
早く転職するようすすめているのではないか。
俺の未来はリアルジャムおじさんなのか。