ジャンボ

2021/08/09

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

ジョッキに入ったそれを一気飲みしたら、
間違いなくお腹をくだしそうな黒々とした水の中で、
何食わぬ顔して泳ぐ鯉と同様、
おそらく順応性が高いのでしょう。
(オリンピックのトライアスロンの選手には申し訳ないが)

初めて中京テレビで仕事をさせていただく関係で名古屋へ。
新たに身を置いた環境で、
たとえ悪い部分が目に付いたとしても
「まあ、こんなものなのかな」と、何となく納得してしまう性格が、
凶と出ているのは間違いありません。

今、品川から乗り込んだ新幹線の、
窓際の席でこれを書いているのですが、
2メートルはあろうかという、
「ジャンボ」以外のあだ名は思いつかぬ
大柄な外国人が隣に座っているのです。

時は平日真っ昼間、車内はガラガラ。
いくらでも空いているというのに、
指定された座席に向かえば何故か隣にジャンボがドーン。
正直、まるっきり意味がわかりません。

今のところトイレの心配はありません。
電話で伝えることもありません。
しかし、ジャンボがドデンと居座るばかりか、
薄くいびきをかいているせいで、
何かあっても出るに出られぬこの状況にだけは、
どうしても馴染めずにいるのです。
目的の地まであと1時間、不安で堪らないのです。