荒木建策（放送作家/アリゴ座主宰）

先日、久し振りにキャリアのメール開くと
口の奥がキュッとなるような甘酸っぱいメールが届いていた。
「憶えてますか」から始まるそのメールは、
10年ほど前に付き合っていた女性からのものだった。

10年前。
今は自由と平和で出来ている私の身体に、
まだやんちゃの血が少しだけ流れていた頃。
メールを読み進める内、記憶のパズルが形を成していく。

あれやこれや、よく覚えているなというエピソードが
果てしなく綴られていた。
そして、色々話したいことがあるから会いたいと…。

10年前の記憶を
自らの都合のいいようにデザインするのは簡単だが、
それは無理だよ、全部は食べられないよと忠告したのに、
赤飯と団子といなりの炭水化物3点セットが食べたいと言って聞かず、
やはり食えずに、結果いなりは腹いっぱいの
私が食べる羽目になったという事を、
デザインすることはできなかった。

「憶えていますか」との問いには答えられる。
もちろんと力強く答えられても、
その後の「ところで、今、幸せですか」には、
なんと答えればいいかわからない。

いや！なんか怪しいやつに誘ってくる感じ！
宗教かマルチだろ！
と思って、そっと画面を閉じた。

だが、果たして私は今、幸せなのだろうか。
そこは引っ掛かった。
とりあえずいなりは大嫌いです。