自己責任

2021/11/29

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

とある番組の企画で他人の不幸話を聞いていて気づいたのは、
不幸の大半は自らが招いているということだった。
例えば、競馬で10万円負けたとかは、
馬の走力のせいではなく本人の自己責任でしかない。

まあ、
極論をいえば、街を歩いていて隕石が落ちて命を落としたとしても、
そのタイミングでその場にいた自己責任ではないか。
しかも、全く笑えない不幸だ。

ただ、不幸話は死以外、すべて笑いに変えられるから、
ネタとして話していくことで、胸のつかえは取っていけばいい。

事は大きいのに、やっていることは滑稽なのが、
不幸話で笑えるバランスで、ここでひとつ小話をしたい。

先日、銀行で登録した実印が必要になったわけだが、
何年も前に登録したものだし、
家の引き出しには、まるでトラップのように判子が10本ほどあるため、
どれが本物かさっぱりわからなかった。

窓口に数十本を持ち運び、
いい大人が「うーん、これじゃない」、「こっちでもない」とやる姿は
あまりに滑稽で銀行員が思わず吹き出してしまったが、、
当の本人は本気である。
もしや、一本も該当せず、
どこかで紛失した可能性を考えると冷や汗も垂れてくるものだ。
無事に見つかって事なきをえたのが不幸中の幸い。

肝を冷やした点でいえば、
今年最大の不幸がこの話を飲みの席で話したら、
ひとつもウケずにスベった事で、
さらに揺るぎない不幸話へ昇格した。
もちろん、これも自己責任。

みなさん、外は本格的な冬です。
今年の不幸は大掃除と一緒にすべて片づけ新年に向かいましょう。

これを読んだ鬼だけは、
なんとか笑ってくれますよう。